なぜメニュー価格設定が経営を左右するのか
カフェを経営していく上でメニューの価格設定を感覚や「なんとなく」で決めてはいけません。
適切な価格設定をせずに営業を続けていくうちに、月単位や年単位で計算した時に大きな赤字や損失を生み出してしまうことがあります。
価格設定を感覚で決めるリスク
「コーヒーやティーはワンコインでいいかな」
「ランチはとりあえず1,000円で提供しよう」
お客様にお得感を感じてもらいたくて、「これくらいの金額ならいいかな」と価格を決めてしまうことは珍しくありません。
しかし、適切価格が1,050円のランチを1,000円に設定して1日10人分出していると、
- 1日で500円
- 1ヶ月で15,000円
- 1年で182,500円
これほどの金額がなんとなくの価格設定によって損失となっています。
感覚的な価格設定も必要な要素ではありますが、深く考えずに価格設定をしてしまうと気づかない間に大きい売り上げを逃してしまいます。
満足度と利益を両立させる考え方
カフェ経営をしていると「また来店してほしい」という思いから価格設定を抑えめにしてしまうことが多いです。しかし、上記でも伝えたように適切な価格設定をしなければ大きなマイナスに繋がってしまい、経営自体が厳しくなることもあり得ます。
そこでメニュー設計時に価格以上の満足感を感じてもらうために付加価値を与えることが非常に重要になります。
- 「ホットコーヒー 500円」よりも「店主のこだわり焙煎コーヒー 500円」
- 「オムライス 1,000円」よりも「ふわとろ卵と自家製ソースのオムライス 1,000円」
同じ金額を頂いていても注文したお客様にはより高い満足感を感じてもらえそうではないでしょうか?
価格設定には価格だけでなくメニュー設定も重要であると言えます。
価格設定の基礎|原価率とFL比率の目安

ここまでは心理的要因も含めた価格設定の話をしました。それらのマインドを持った上で一般的な価格設定の基本やロジックを用いることで、より良いメニュー設計を行うことができます。
数字の話になると難しく感じますが、知ってしまえば簡単です。スマホの電卓さえあれば誰でもできます。
ここでは基本中の基本、「原価率」と「FL比率」の話をします。
原価率とは?カフェ業態の理想値
原価率とは簡単にいうと「売値に対してかかっている材料費は何パーセント?」ってことです。
材料費300円の商品Aを1,000円で売ったら、商品Aの原価率は30%になります。計算式は簡単で、
原価率(%)=(食材原価 ÷ 販売価格)× 100
です。オムライスで例えるなら、
一玉100円の玉ねぎを半分使ったから「玉ねぎ50円」
10個入り250円のたまごを3個使ったから「たまご75円」・・・
というようにオムライスにかかった材料費を計算します。材料費の合計が400円だとして、売値が1,200円であれば、(400円÷1,200円)×100で原価率は30%となります。
一概には言えませんが、カフェ業態では原価率を25〜35%のうちにおさめるのが一般的です。
FL比率で全体の利益体質を把握
飲食店を経営していると嫌になるほど「FL比率」という言葉をききます。売上に対して、食材費を意味するF(Food)と、人件費を意味するL(Labor)が何%を占めているかの比率のことをいいます。計算式は、
FL比率(%)=(食材費+人件費)÷ 売上高 × 100
です。売上130万円のお店で食材費が38万円、人件費が40万円発生していると仮定すると、
(38万円+40万円)÷130万円×100=60%
という計算式になり、FL比率は60%だとわかります。
一般的にカフェや喫茶店を含む飲食業のFL比率は55%〜60%が適正と言われています。FL比率は低すぎても高すぎても良くないので、適正なFL比率を意識してメニュー作成や人員配置をすることが重要となります。
原価だけでなく「客単価」「回転率」「人件費」を掛け合わせる

原価率が適正でも「売上が残らない」というケースはよくあります。その理由は、原価だけでは利益構造は決まらないからです。
カフェの収益は、
「客単価 × 回転率 × 席数」
で決まり、そこから「食材費と人件費」を引いた分が利益になります。
つまり、原価率30%でも、
・客単価が低い
・回転率が悪い
・人件費が高い
このどれかが崩れるだけで、一気に利益が消えてしまいます。
原価は大事な指標ですが、“お店全体の数字をどう組み立てるか” を考えないと、価格設定だけでは経営は安定しません。
売上シミュレーションの基本
売上シミュレーションは難しく見えますが、式自体はとてもシンプルです。
売上 = 客単価 × 回転率 × 席数 × 営業日数
たとえば、客単価1,200円のカフェで、席数20席・1日3回転なら、
1日の売上は
1,200円 × 20席 × 3回転 = 72,000円
ここから原価率30%、人件費30%だとすると、
FL比率は60%なので
72,000円 × 0.40= 28,800円 が粗利です。
家賃・水道光熱費・雑費をここから引いて、
残った分が実質的な「利益」となります。
つまり、客単価を10%上げるだけでも、
回転率を0.3改善するだけでも、
席数を少し増やすだけでも、
全体の売上と利益は大きく変わるということです。
原価率だけをいじるより、
“全体の式のどこを動かすか” を考えた方が改善幅は大きいです。
人件費を抑えるオペレーションの工夫
カフェ運営で最もコントロールが難しいのが「人件費」です。
食材と違い、急に半分にしたり増やしたりできないからです。
ただ、オペレーションを見直すことで、
人件費を削らずに効率を上げることはできます。
例えば、
・ワンオペで回せるレイアウトにする
・仕込みの手間が大きいメニューを減らす
・配膳・下げ作業が少なくなるよう導線を整える
・ピーク時だけ短時間のヘルプを入れる
・注文を取りに行く回数を減らす(先会計やセミセルフなど)
こういった工夫は、時給を下げる必要もなく、
「同じシフト人数で売上を最大化する」方向に機能します。
特に客単価1,000〜1,500円帯のカフェでは、
人件費が10%変わるだけでFL比率が大きく変動します。
メニュー構成や動線整理は、価格設定と同じくらい重要です。
価格は“感覚”ではなく“設計”で決めるのがカフェ経営の要
メニュー価格は「なんとなく」で決めてしまいがちですが、カフェ経営ではそれが一番大きなリスクになります。原価率やFL比率といった基本の数字を理解し、客単価・回転率・人件費などの要素を組み合わせて考えることで、はじめて利益の残る価格設定ができます。
また、価格を上げるのではなく「価値を伝える」ことによって、お客様の満足度を高めながら適正価格を維持することも可能です。店のこだわりや体験価値をプラスすることで、同じ金額でも感じられる価値は大きく変わります。
価格設定は“数字の管理”と“価値づくり”の両方を行う作業です。感覚だけに頼らず、数字とオペレーションに基づいたメニュー設計を続けることで、安定した経営とお客様の満足度を同時に高めることができます。
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